はじめに:現場から見たK-POPアイドルの歌い方とボイストレーニング
はじめまして、Topline Artist Development代表、現役音楽プロデューサーのテツヤです。
東京を拠点にしたK-POPボイストレーニングの専門機関で、アイドルやシンガーの皆さまのために実践的な情報を発信しています。
元々AVEXのワールドオーディションで優勝し、専属作曲家として、アジア圏で作曲活動をしていました。
その経験を活かし、アジア圏の成熟したボーカルトレーニングを日本に伝える活動も続けています。
今回はK-POPアイドルの歌い方に特化して、なぜK-POPアイドル達が日本より早く世界で活躍できたのかをプロの現場目線で解説していきます。
スクール初心者がまず最初に知っておくべきK-POP歌唱の基礎を解説
私自身がこれまでボイストレーニングを他のプロシンガー、アイドルや俳優さまに施す際に、ボイストレーナーとして実際の練習の前に話してきた実践的な内容になります。
他の音楽スクールに通っている方々やボイトレ初心者の方も、このブログ記事を見てK-POP歌唱の歌い方について理解を深めてから練習にあたっていただくことにより、高い効果が得られると思います。
第1章:世界で主流になったK-POP歌唱の歴史
K-POPの歌い方は20年前からJ-POPと全く違っていた
昨今の音楽系エンターテイメント市場はK-POPが日本の音楽市場を大きく上回り、2兆円規模と呼ばれています。その人気を支える最も大きな要素となっているのがK-POPアーティストの芸術的能力の高さ、特にボーカルとしての歌の上手さです。
日本の論評ではK-POP人気を”国策でプロモーションしたから”などと分析されますが、全く違います。
韓国政府がK-POP文化をプッシュしだしたのは直近15年くらいの話ですが、さらに遡って20年以上前からK-POPの音楽面の国際性はアジアで群を抜いており、特にボーカル歌唱能力に力を入れていました。
筆者の私はAVEX社のアジア支社の作曲家として契約をしていましたが、その時点でもK-POP式の歌い方は台湾でも高く評価されていて、ボイストレーニングも日本で行われているものとは全く違う次元のものでした。
K-POPの歌い方は洋楽のR&B式が起源
まず、日本でも大人気となったK-POPグループ、TwiceやBLACKPINK、aespaやNewjeansといった現在のK-POPシンガーたちの歌唱法がどのように形作られてきたのか、韓国歌謡の歴史を少し遡っていきましょう。
私がK-POPの歌い方がいわゆる日本のJ-POP歌唱と全く違うのだなと気づいたのは、今から約25年前の2000年にデビューされたBoAさんという日韓両国で大ヒットした女性シンガーを観たときでした。
BoAさんの韓国での所属会社はaespaや東方神起を生み出したSMエンターテインメントですが、日本では私も専属作曲家として所属しておりました、AVEXという1990年代からダンスボーカルを得意とするレコード会社でした。当時の代表曲がこちらです↓
BoA -Milkey Way (2000)
こちらを聴いていただければ一目瞭然なのですが、25年前の時点でK-POPアイドルのボーカル歌唱はすでに現代のK-POP歌唱法と言っていいほど確立していますね。
ソロアーティストなので声に個性があるのが感じられると思います。BoAさんは特にしっかりとした地声領域が開発されているからで、それをベースに中音域から高音域に向かう時の響きの拡がりが魅力でした。
この歌唱は私たちTop1ineでも一つの目標値として定めており、このサイトのトップページにあるサンプル音源の歌唱もBoAさんのような歌唱要素を日本人の手で再現できることを証明するために公開しています。
1990年代から世界の主流になったR&B流の歌い方
実は、このようなK-POP独自の声質にも源流があり、今から30年以上前の90年代洋楽ポップスのR&Bという音楽ジャンルになります。
K-POPアイドルだけでなく、K-POPシンガー全体が洋楽R&Bレベルを目標にトレーニングされてきたものなのです。
例えば下のアトミック・キッチンという女性ガールズグループは2000年の歌になります。衣装や歌い方、雰囲気にK-POPアイドルの源流が感じられると思います。
Atomic Kitten -Eternal Flame
ダンス&ボーカルの歴史とともに発展してきたR&B文化
もともとは黒人アーティストのソウルミュージックの中にリズムアンドブルースというジャンルがあり、略してR&Bと呼ばれていましたが、1990年以降から現代的なポピュラー音楽と合わさって世界的流行になったのが現代のR&Bミュージックと呼ばれます。(アーバン系R&Bもしくはアーバン系ソウルと呼ぶことも多いです)
特に歌の上手さ、声の個性を大切にするアメリカン及びUKミュージックと、アイドルよりも歌謡ジャンルが発展していた韓国大衆文化の相性が良かったことが、K-POP文化という新しい音楽ジャンルを作っていったと考えられます。
さらに2000年以降になると踊りながら歌うシンガーもR&B音楽の主流となりました。例えばBTSのJung Kook(ジョングク)が2023年に歌った3Dという曲がありますが、あれは2002年にアメリカの超人気シンガーJustin TimberlakeがヒットさせたSenoritaという楽曲のオマージュ楽曲になっています。
Jung Kook(ジョングク)⁻3D (2023)
Justin Timberlake -Senorita (2002)
2つの楽曲を見比べてみても、リズムや鳴っている音の感触が非常に似ているのがわかると思います。
R&Bの歌い方をアジア人向けに改良したK-POP
このような楽曲を踊りながら歌うために特化した歌唱法こそ、現代のK-POPも受けつぎ、世界へと人気を拡大させたR&B歌唱と定義していいと思います。
もともとは黒人シンガーの声質をベースに発展してきた文化なのですが、韓国人の歌謡曲シンガーが徐々に取り入れていったのが1990年代後半以降で、その頃はアイドル曲ではなくドラマOSTで使われるバラード曲の中にR&B歌唱に近い歌い方をした歌手が表れ始めました。
韓国の歌謡界の歴史ではBrown Eyed Soulという4人組グループが歌唱力では最も評価が高く、男性アイドルグループのSEVENTEENのボーカルチームもライブで彼らの楽曲をカバーしているのを聴くと、現代のK-POPシンガーの歌い方の礎になっているようです。
My Everything ―Brown Eyed Soul (2003)
アイドルグループSEVENTEENの歌い方も同じR&Bスタイルのまま↓
My Everything – Seventeen Vocal Team
第2章:K-POP発声と歌い方の基礎【実例】
それでは日本人にとってK-POPを上手く歌うためのコツはあるのでしょうか?次からの章では具体的な歌い方の解説に入っていきたいと思います。
『ボーカルスクールに通っているけれどなかなかK-POPアーティストのように歌えない』という悩みを持つ方はまず、ここから発声を見直してみましょう。
日本人が苦手とする息を入れた歌い方
私が20年以上前から韓国人のプロ及びセミプロシンガーの方と発声について話をしてきた中で、特に韓国人の方が『息を入れた声』や『もっと空気を混ぜて歌って』と言うのを耳にしました。
実はこれが韓国人が”いい声”と聴覚的に感じる重要なエッセンスでもあります。
【実例】JYPのNiziUオーディション(Nizi Projectでもやはりこの空気を入れるという表現がJ.Yパーク代表から言われていました↓
J-POPの息使いとK-POPの空気を入れた発声は違うもの
日本で息を入れてのような表現を使うと、リップロールや腹式発声法の時の、『息の支えをしっかり深く入れて』や『深く響きを胸に入れて』というイメージが先行しますが、K-POPの息を入れるという表現は呼吸法の話ではないのです。
かなり技術的に教えるのが難しく誤解が生まれやすいので、自分はレッスンに来て実際に体感していただけるシンガーさんとしかこの話は共有したことがありませんでした。
ただせっかくブログに来てくださった方々へ参考になるとするならば、デビュー当時の東方神起の歌を聴いていただくのが『息を入れた声』を感じるのに最適なヒントになると思います。
ぜひ下の楽曲を再生しながら続きをお読みください。
参考)東方神起/『HUG』2004年リリース
経験上、日本人でプロを目指すシンガーさんに対し、韓国流の『息を入れた』という表現でボイストレーニングや練習方法を伝えてしまうと、”単にハスキーな声で歌えばいい”といった誤解が起こってしまうので、実際に欧米R&BかK-POPの歌唱が出来ていると思えたボイストレーナーの講師を探してから、アドバイスをいただいた方がいいかもしれません。
洋楽のアイドルグループの声を真似るのも大切
K-POPで3大事務所といわれるJYPエンターテイメント、SMエンターテイメント、YGエンターテイメントの社長やプロデューサー陣はみな元アーティストデビュー経験があり、アメリカを中心とした洋楽R&B音楽に影響を受けて育ったプロデューサーたちです。
顕著な例としてTwiceをプロデュースしたJYPのJ.Yパーク氏は、かつてWonder Girlsというガールズグループを全米デビューさせましたが、そのキャッチコピーは”アジアのスパイスガールズ”でした。スパイスガールズというのは5人組の白人アイドルグループで、90年代に世界で一世を風靡しました。
また、ワンダーガールズ以前にすでに大人気となっていたSMエンターテイメントの男性グループ”東方神起”も当初の楽曲コンセプトはやはり”バックストリートボーイズ”や”インシンク”といった5人組の白人グループです。
彼女、彼らの歌唱スタイルは当時からアメリカのメジャー音楽シーンの中心であったアーバンR&B歌唱というもので、日本の音楽シーンでは30年経った今でも主流になることはない歌唱ジャンルでした。
実例:日本人でも洋楽のR&Bボイスを作ることは可能
かくいう私自身も10代前半から洋楽アイドルグループの歌い方を研究してきており、20年以上ボイストレーニングを実践しています。
下記の動画では往年のグループの声マネにも挑戦していますが、このように純日本人でも白人のようなエッジのきいた声に訓練で作り変えることは可能なのです。
Greatest Hits Medley BSB-to-BTS
声質そのものを変えるK-POPのボイストレーニング
もともと、この時代の洋楽R&Bはアジア人がそれまで歌っていた発声法や歌唱テクニックとはあまりにも違うので、日本の音楽業界ではかつてのMISIAさん、平井堅さん、宇多田ヒカルさんが登場するまでは殆ど注目されることもなく、ボイストレーニングで育成しようという動きもありませんでした。(その他のジャンルで十分業界が盛り上がっていたということもあります)。
ですが韓国のアイドル業界はあえてこの難しい領域にチャレンジしていきました。正確に言うと台湾や香港のアーティストもどんどんこのR&Bスタイルにシフトチェンジしていきました。
その過程で、アジア人シンガーに洋楽アーティストのような曲を歌わせるためのボイストレーニングも独自に発展していきました。
コーラスハーモニーの歌い方で声質に差が出る!
韓国式ボイストレーニング法とJ-POP式のボイストレーニングの成果が明確に分かるのが、ハーモニーを奏でたときの歌声です。
特にJ-POPはカラオケで誰もが楽しめるような楽曲をつくる傾向も強いので、アイドルグループがハーモニーを奏でるということが比較的少ない時代が続きました。音楽用語でいうと”ユニゾン歌唱”と言われますが、皆で一緒の音程のメロディを歌う曲が多いですよね。
対してK-POPの場合はNew Jeansの”Ditto”のように比較的ポップに作られた曲であっても、サビでは3声の和音となるコーラスが入っていることが多いです。
NewJeans -Ditto
ハモリが入っているかどうかが日本と韓国の違いではないので注意してください。作品をよく聴き比べてほしいのですが、ハモリが入った時の声が立体的に浮き出してくるような音質の違いを聴き取ってほしいのです。
これがそもそも声質を洋楽アーティストに近づけるようトレーニングされたK-POPシンガーと、カラオケの採点のように音程を正確に出すことに特化した発声練習の違いが顕著に分かる一例になります。
第3章:J-POPとK-POPで発声法が違う
K-POPの発声法は声帯の働かせ方が根本的に違う
発声の仕組み上、音の鳴る原音と呼ばれる振動が起きるのは声帯といって喉の奥にある2つのひだの重なり部分です。
そこから発せられた喉頭原音が、主に顔や口の中にある共鳴腔で増幅されて、そこに舌や歯の動きなどで言語が加わり歌声になっていくのです。
ですので、まずもって大事なのが声帯での原音開発です。そこでR&BやK-POPに適した鳴り方を作れていない場合、どんなに呼吸法や響きのトレーニングをしても根本的な音色が違うといった壁に阻まれてしまいます。
注意!リップロールの練習が逆効果になることもある
ですので、日本人的な発声が抜けないまま、単にK-POPの研修生がよくやっているリップロールなどを見て真似だけしていても歌声は劇的に変わることはありません。
リップロールなど見た目的にもわかりやすいトレーニング法は、たびたびテレビなどでも紹介されるので、多くの方がそれをやることで声が良くなると思ってしまうのですが、正直なところ本番前の緊張を取る脱力くらいしか効果はありません。
逆にそればかりやっていると、唇運動で息の量を支える癖が強くついてしまい、当たり前ですが口を開けて発声したときには適さない息の量を使いつづけ、発声のバランスを失うことにも繋がります。
無駄なところに力を入れないことが発声の基礎
では一体どのように発声するのがK-POPやR&Bの歌い方に必要かという最も大切な基礎としては『脱力』がキーワードになります。
日本人の発声の代表的な癖としては過度な偏った腹式呼吸の練習による上半身の硬さ、言語の文化的な癖に由来する喉締め発声による響きの不足が殆どのシンガーに当てはまります。
というよりもそのような身体を固めて出す声・もしくは響きを鼻や胸など特定の方向に集中させる歌声がむしろ心地いいと感じる聴衆、それが正しいと感じる音楽関係者も多いので、間違いではないのです。それも一つの文化、大衆芸の一つと言えます。
しかし論理的に、そのような発声では常にダンスしながら歌うK-POPをそもそも歌うことが困難になりますよね。
ボイストレーニングを教えるときに私は『適切な脱力』と伝えるようにしていますが、初心者の方がまず気を付けなければいけない出発点はここになります。
この章であげた、J-POP式発声とK-POP式発声の違いをしっかりと体感し、地声領域で声質の明らかな違いを自分の声でも納得できてから、歌の中の歌唱技術に取り組むようにしてほしいです。
宇多田ヒカル『First Love』で見る日韓の歌い方比較
J-POPアイドルとK-POPアイドルの歌い方の違いを感じるには同じ曲を日本と韓国のシンガーがどのように歌っているかを実際に観てみるのが一番いいかもしれません。
例えば宇多田ヒカルさんの名曲『First Love』を日本のボーカルグループのボーカリストさんが歌ったカバー動画と、韓国のアイドルグループのメンバーが歌った動画を見比べてみてください。
実例から分析するK-POPアイドルの”空気の入った声”
どちらの歌手の方も素晴らしい歌声のボーカリストですが、よく聴くと上にあげたような日韓の歌い方の違いが音として感じ取れるはずです。
日本人ボーカリストがカバーしている動画↓
鷲尾伶菜さん(元E-GIRLS) -First Love
韓国人アイドルがカバーしている動画↓
KIM CHAEWON (キム・チェウォン)- First Love
第4章 動画でみるK-POPの歌い方とトレーニング方法
では次に実例を観ながら、K-POPを歌うためにはどのような歌唱技術が必要かをご紹介していきます。
歌唱技術とはフレージングに必要なビブラートやエッジボイス、ベルティング発声やフェイクなどのことを言います。特に2024年現在、日本のいわゆる有名アイドルソングにはベルティング以外の上記の歌唱技術は殆ど使われていません。
①K-POP式ビブラート
K-POPで使われるビブラートは大きく分けて2種類あります。一つは滑らかなレガートの中で行われるクラシックの流れを組むもの。
もう一つはトレモロビブラートと言って、クラシックベースのボイストレーニングでは基本的に良くないとされるものをあえて使用する場合があります。
J-POPでもビブラートが得意な歌手はいらっしゃいます。日本人聴衆の文化としてはいわゆる歌謡曲のコブシを交えた演歌風ビブラートを好む傾向にあり、こればかり使っていると洋楽R&BやK-POPとは程遠い歌唱になってしまいます。
また、宇多田ヒカルや倉木麻衣さんのようにレガート式のビブラートは出来なくトレモロ式ビブラートだけを使う場合でも、声質がR&Bに向いているタイプの人もいます。
お手本になるのが、aespaというガールズグループのメインボーカル”ウィンター”と”ニンニン”のビブラートですね。『Forever』というバラード楽曲の後半ブリッジ部分にレガートからビブラートに自然に移っていくフレージングがあり、とても心地よい音色となっています。
aespa -Forever ビブラートの歌い方に注目↓
②K-POP式エッジボイス
近年K-POPアイドルソングで、2020年以降のガールズグループ、ボーイズグループともにエッジボイスを多用する歌唱法にシフトしていきました。
元々マライアキャリーのような低音のハスキーな地声を美しく聴かせるシンガーが装飾として、曲の歌い始め等に使っていたもので、技術というより歌い癖のような声なのですが、K-POPではそれ単体が歌唱技術として認識され多用されています。
日本では高音発声のトレーニング用にボイストレーナー業界で用いられることが多いです。エッジボイスが高音発声の開発に有効かどうかは個々人の声の状態や声帯の特徴にもよるので、万人が絶対に取り組むべき技術ではありません。
エッジボイスの歌い方は一瞬声帯周りの筋肉を硬直させて歪みを出すパターンと、逆に声帯周りは脱力しながら声帯自体をしならせるように合わせてエッジ音を出す2種類あります。
くれぐれも、練習する際は適切な調音判断が出来るトレーナーと一緒に慎重にトレーニングされた方がいいです。
エッジボイスが多用されて話題になったのは昨年のNewjeansの『OMG』という楽曲で、Babyを連呼する声が全てエッジボイスでフレージング構成されていました。
Newjeans-Ditto ブリッジ部分のエッジボイスの歌い方に注目↓
(※R&B風のエッジボイスをマスターしたい方はぜひ当スクールにいらっしゃれば丁寧にお教えいたします。)
③K-POP式ベルティング発声
ベルティングという言葉は一般的には馴染みがないと思いますが、いわゆる上手いシンガーの力強いシャウトを想像していただければと思います。高音を突き抜けるような力強い声で表現したい場合に、クラシックのような滑らかな高音より、少し歪みが欲しいと思うのはよくある感覚だと思います。
その際に地声感をいかに保ちながら安全に高音を出すかという解決策として名づけられているのがベルティング発声と呼ばれる用語です。
英語で”持ち上げる”という意味なのでまさに理想の感覚を表現した発声ですね。
J-POPでよくある苦しそうな高音だけど良い声に聴こえるシンガーさんの場合は、ベルティングというよりは地声を無理やり息の量と声帯周りの筋肉の強い拘縮による”がなり発声”に近いものが多いです。
がなり発声でも感情が聴衆に届いて感動を生める場合も多々ありまして、一概に否定するものではないのですが、喉には負担がかかります。歌がうまいとされているJ-POPシンガーさんが意外に声帯ポリープになって休業されるケースが多いのもこれが原因かもしれません。
LILY(リリー)のベルティング発声は最高峰に上手い
ベルティングが非常に上手い歌手ですと、NMIXXというガールズグループのメインボーカル”LILY(リリー)”が挙げられます。下のサンプル動画を見る限り地声とミックスボイス領域の境目が聴覚的に全く分からないほどです。
NMIXXのLily-ベルティングボイスの高音の歌い方に注目↓
この音域となると女性シンガーの場合裏声でも喉が厳しくなる音域です。
楽曲の中でもベルティングが多用されていますが、LILYさんに関して声帯を痛めて休業したという話は聞いたことがなく、世界的に見てもトップレベルの歌唱技術を持つシンガーであるのは間違いありません。
④K-POP式フェイク
またR&Bの歌唱技術で特に聴衆を引き付けるのがフェイク歌唱になります。これは決まった音符やメロディー通り歌うのではなく、フレーズの一部やそれ全体を即興で細かいメロディをその場で表現するものです。
R&Bで用いられる複雑なフェイク歌唱は声帯を強く合わせるように地声をしっかり出すJ-POPの発声では基本的に不可能でして、最もR&Bディーバとして名高いMISIAさんや平井堅さんなどの楽曲中にも殆ど用いられたことはないと思います。(もちろん技術的に彼らの素晴らしい歌唱能力でしたら可能であるはずですが、カラオケでも歌われる大衆POPsを歌わないといけないので製作の都合でやっていない可能性も高いです)
K-POPの場合、そもそもカラオケで一般の方が歌うことを想定していないので、フェイクが他所に用いられています。
SistarというガールズグループのメインボーカルHYOLIN(ヒョリン)の楽曲を聴くと、そもそもフェイクがないと成り立たない楽曲になっているのがわかります。
Hyolyn-フェイク発声の歌い方に注目↓
第5章:日本人でもK-POPの歌い方をマスターするために
R&B歌唱でデビューを掴んだ実例を紹介
私自身のプロデュース事例で恐縮ですが、歌手の清水美依紗を14歳からアーティストプロデュースする中で、終始こだわったのが、K-POPに負けないレベルでのR&B歌唱が出来る楽曲及びシンガーをデビューさせることでした。
上記に挙げた、ビブラート、エッジボイス、ベルティング、フェイク歌唱の魅力を日本語の楽曲にどう落とし込むかのところです。
やり過ぎると洋楽の真似をしていると思われたり、母国語の本来持つ音韻が失われてしまうことがあるのです。(※実はK-POPでも同じ課題があります)
下記のデビュー楽曲『STEP INTO MY HEART』の作曲段階、レコーディング段階でもフェイクを入れ込んでありますのでご参考になさってください。
作詞作曲 MV制作; Top1ine Artist Development 代表
レコーディング・歌い方ディレクション Top1ine Artist Development 代表↓
当時は17歳でしたが、この方の現在の歌唱法に比べR&Bの作法がより深い歌声にボーカルディレクションを施しました。
K-POPで活躍できるトップラインボーカルを育成しています
現在私たちTop1ine Artist Developmentでは、このような洋楽に近い本格R&B歌唱よりも、K-POPアイドル業界が求める歌い方を主に作り上げるボイストレーニングを研究しています。
このウェブサイトトップページのサンプル音源を聴いていただければかなり高い精度で、日本人でもK-POP歌唱を再現出来ていることを分かっていだけると思います。
現状、日本にある韓国大手事務所がオーディションする際によく言われるのですが、日本人で歌が上手いアイドル候補生の獲得に苦労しているためです。
ですので、そのような歌声でレコーディングディレクションしてほしい方や、プロとして活躍したいという方もぜひ下記より当スクールにお問い合わせいただければと思います。
K-POPのように歌えることはもちろん、日本人にしかできない世界に誇れるR&B歌唱表現を作ることを目標にしています。
日本人初心者がやるべきK-POP式ボイストレーニングとは?
とはいえこのブログの読者様から「ここまで読んだのだから具体的なボイストレーニング法を教えてほしい!」という声も聞こえてきそうです。
では、上記のようなボイストレーニングの方向性、歌唱表現の歴史が違う日本の音楽業界にいながらK-POPでも活躍するためにシンガーはどのようなトレーニングを積めばよいでしょうか?
全てをブログで公開することは難しいですが、本質的な部分は概ね下記の通りとなるでしょう。
①音の成分を感じわける聴力を徹底的に鍛える
K-POP含めアジア、世界で活躍するためにはプロ・アマ含めてほとんどの日本人シンガーの方々がまずは声質の成分の違いを感じ取る聴覚能力を高めるところから始めないといけません。
総論としても、結局ここが開発されていなければいつまでたってもボイストレーナーや歌のディレクターの言われるがまま修正を重ねるタイプの歌唱表現になってきてしまいます。例えば上記のNew Jeansのメンバーの歌唱でも、ベトナムの血が入っているハニだけは他メンバーと明らかに違う声の音色で歌っています。そのようなところに自然と気づくためには、どうしてもR&B歌唱のルーツである楽曲を丁寧に聴きこみ、練習する過程が必要になります。
②声帯の高度なコントロールに特化したボイストレーニング
そして、きちんとした聴覚が養うことと並行して声帯の高度なコントロールに特化した声の出し方やそれに基づいたビブラートやフェイクなどを学んでいく必要があります。
私たちは従来の日本で行われてきたボイストレーニング法を否定する必要はないと考えておりますので、○○は絶対正しいや○○のトレーニングは間違っているという言い方をしません。
しかし、K-POPや洋楽R&Bの発声法を身に着けたいのであれば、日本でこれまで常識とされてきたボイストレーニングやボーカルトレーニング法とは違うアプローチで取り掛からないといけません。なぜなら、もし今までの日本のボイストレーニングが理にかなっていたものならば、今現在K-POP業界からも評価されるような日本人アーティストが沢山出ていなければおかしいですよね。
しかしながら実態として、日本のJ-POPシンガーが総じて歌唱力で高く評価されているという話は殆ど聞きません。(もちろん個々人単位で素晴らしい声色の人はいます)
客観的に見て現状そうでないということは『一般的な日本の歌唱技術への解釈が世界で求められているものとは違う』ということの証明でもあります。
もしあなたがシンガーを目指していてなかなかK-POPシンガーのような声が出せないと壁を感じていらっしゃるのであれば、一度まっ白な状態に戻してゼロから声づくりをしていく心構えを持ちましょう。
③多言語ボイトレで歌唱感覚を研ぎ澄ます
さらに、日本語だけではなく、まずは英語の発音に特化した発声トレーニングを基礎としましょう。それが出来てからK-POPなら韓国語、さらに大きな市場を目指して中国語などの言語ごとの歌唱感覚を身に着けていく必要があります。
2024年にデビューした大型グループ”BABYMONSTER”のセンターボーカル、アヒョンさんのように韓国人でありながら英語・中国語が堪能な人材が現れ、今後はこのグローバルな歌唱技術の流れが一層高まることが予想されます。
また、有名な”Kep1er”や”Triple S”などもそうですが、大型グループとなると当然のように日本人メンバーだけでなく中国人メンバーも入ってくるのでリーダー的ポジションに立つ人材は語学能力がそもそも問われます。
実は、それぞれの言語特有の発音が出来るように訓練することが聴覚を鍛えることにも繋がり、歌の発声の良さにも深くつながってきます。
ですので、多言語の歌唱トレーニングは今後一般的になるでしょう。ぜひチャレンジしてほしいです。
中国語・英語を学んでいるアヒョンの自己紹介動画↓
まとめ : K-POPとその背景にあるカルチャーを学ぼう
最後までお読みいただきありがとうございました。結論として、K-POPをアーティストレベルで歌いたければ単にK-POPの歌をモノ真似するのではなく、その背景にある音楽文化や多言語文化を学ぶことが大切です。
このサイトでは実際の歌唱サンプルやプロデュース実績とともにグローバルアーティストへの近道となる情報をお届けしているので、ぜひ他の記事も参考になさってください。
また、プロ志向で『K-POPが歌えるようなボイストレーニングを習ってみたい』という方は、ぜひコース紹介のページもご覧ください。様々なニーズに対応しておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。