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K-POPアイドルの歌唱力①│aespa”ウィンター”を育成したSMエンターテインメント式ボーカルトレーニング

2024 - 06.06
執筆者情報
TOKIONE TETSUYA

AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、
独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。
NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。
2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。
早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

K-POPヨジャアイドルの歌唱力の秘密に迫る│その①『SMエンターテインメント』

はじめまして。このブログはK-POPボーカルを日本人向けに研究育成しているTop1ine Artist Developmentが運営しています。

今シリーズでは~K-POPヨジャアイドルの歌唱力の秘密に迫る~と題して、KPOPの事務所ごとの歌唱力の特徴に迫っていきたいと思います。

K-POPは大手事務所ごとに歌い方の特徴がある

一口にK-POP歌唱やK-POPの歌い方といっても実はいくつかの流派に分かれていて、それぞれが独自の発展を遂げています。

このブログにはK-POPアイドルやK-POPシンガーを目指しているレッスン生の方々も訪れてくれていますが、オーディションを受ける際にも各事務所がどのような歌唱スタイルを望んでいるのか知っておくことはとても大切です。

SMエンターテインメントの歌唱力の秘密を解説

今回は2024年上半期で音盤売り上げがダントツで絶好調のaespaや古くはBoAや東方神起も所属していたSMエンターテインメントの歌唱スタイルについて歴史を遡って研究していきましょう。


SMエンターテインメントってどんな事務所!?

SMエンターテインメントは、その独自のアーティスト育成システムとユニークなボーカルスタイルで、韓国音楽産業における革新的な存在として知られています。

ここからは、SMアーティストのボーカルを特集するだけでなく、その特徴が最も顕著にみられる女性ボーカリストについて実際の動画を見ながら分析していきます。

K-POPを歌唱力で牽引してきたSMの躍進

SMエンターテインメントは別名イ・スンマン帝国

SMエンターテインメントは、韓国の大手芸能プロダクションで、K-POPアイドル市場を事実上初めて開拓した企業です。

1995年にイ・スマンによって設立され、練習生の育成システム・A&R(アーティストの発掘や育成、PR等に総合的に関わる業務)・ソングキャンプなど、現在のK-pop産業を構成するシステムを韓国で初めて確立した企業としても知られています。

K-POP黎明期のスーパースターが勢ぞろい

BoA、東方神起、SUPER JUNIOR、少女時代など、多くの有名アーティストを輩出し、積極的に海外市場への進出を図り、K-popが音楽の一大ジャンルとして成長する基礎を作ったという意味でも、韓国音楽産業において最も重要な役割を果たしてきました。

確固たる名声と支持を得るSMヨジャグループ

SMエンターテインメントは、「ビジュアルの強さ」と「高い歌唱力」を併せ持つアイドルのプロデュースに定評があります。

特に、2024年はK-pop女性アイドルグループの人気が歌の実力で左右されるトレンドが強まっており、SMの女性アイドルが高く評価されるようになってきています。

2024年、驚異的な売り上げ成績を残したaespa‐Supernova↓


SMエンターテインメント式のボーカルスタイルとは

歌い方特徴:明瞭な発音と独特の声色

SMエンターテインメントは、グループメンバーのキャスティングの際に、ボーカルの実力を特に重視することで知られています。

また、基本的な発声や歌唱技術、ライブパフォーマンスのトレーニングを練習生に十分に積ませてからデビューさせるため、SMがプロデュースしたアイドルグループは歌唱力不足の批判を受けることが少ないと言われています。

SM歌唱スタイルの特徴としてよく挙げられるのは、明瞭な発音を重視し、チェストボイス(声音を胸腔で響かせる技術)の割合を減らした声色の駆使です。

プロデューサー『ユ・ヨンジン』のボイストレーニング手腕

特に、専属プロデューサーとして活躍したユ・ヨンジンによるR&Bベースのボーカルスタイルの影響が強く見られます。高音域でのフェイク(演歌のこぶしに似た装飾的な歌唱技法)において、一音一音をピンポイントに鋭く拾い上げる、ジリジリ響くようなやや金属的な発声に最も個性が表れます。

代表的なグループ”aespa”のレコーディング風景を見れば、生歌での声のパンチ力が圧倒的であることが一目瞭然です↓

「ユ・ヨンジンの声帯から産まれた娘たち」

ユ・ヨンジンの歌唱法を色濃く受け継いだアイドルは「ユ・ヨンジンの声帯から産まれた子」と呼ばれ、特に歌が上手いと称賛されています。

日本ではレコード会社の取締役や役員がアイドルよりも歌がうまい歌手などということは考えられないのですが、ユ・ヨンジンはSMエンターテインメント取締役でありながら、所属アーティストの歌唱指導を行っているのです。

ユ・ヨンジン本人の歌声は少女時代の楽曲で聴くことができます↓

 


aespa“ウィンター”の歌の上手さを解説

SMのヨジャアイドル(女性アイドル)では、aespaのウィンター、S.E.Sのバダがユ・ヨンジン式ボーカルの筆頭に挙げられます。

ここからは彼女たちのボーカルの特徴について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

aespaの”ウィンター”の歌の上手さはSM歌唱の集大成

ウィンターは、K-POP第四世代を代表するガールズグループの一つaespaでニンニンと共にメインボーカルを担っています。

多彩なウィンターの歌唱スタイル

彼女は同世代の女性アイドルの中で最高峰のボーカリストの一人として呼び声が高く、クールでエッジの効いた高音はもちろん、それと対照的なソフトなウィスパーボイスまで多彩な声音を使いこなし、音域も3オクターブに達するほどの実力を持っています。

名曲「Next Level」のブリッジ・パート「Come on!Show me the way to KOSMO Yeah “」で披露したパワフルなボーカルによって、彼女は「ユ・ヨンジンの声帯から産まれた娘」として認知されるようになりました。

大ヒット曲「Savage」や「Girls」では高音のアドリブを、また「Drama」ではキラーパートである「You Know, I’m Savage」を見事に飾り、好評を博しました。

こうしたガールクラッシュ系のコンセプト曲の柱となる力強いボーカルパートを担う一方で、それらとは対照的なテイストのバラード曲での活躍も目立ちます。

とくに、ソロとして担当したOST(「With You」「Voyage」等)では、クリアかつ繊細で柔らかく感情表現豊かな彼女の声の特質を垣間見ることができます。

 

SMボーカルスタイルの新旧比較

SMイズムを継承したaespaのカバー・プロジェクト

aespaは、2021年にSMエンターテイメントが過去にプロデュースしたレジェンドアーティストの曲をリメイクするプロジェクトにて、1997年にデビューした第一世代の伝説的ガールズグループS.E.S.の「Dreams Come True」をカバーしましたが、これはいわばSM女性アイドルのDNAを新世代へと継承する取り組みだったと言えます。

S.E.Sのパダとaespaのウィンターを動画で比較すると?

aespaもカバーしたSM初期のグループであるS.E.S.にて、メインボーカルを務めていたのがパダです。

パダとウィンターに共通する歌声の特質を、同曲のブリッジ・パートの比較から見てみましょう。

S.E.S -Dreams Come True(オリジナル版)

aespa -Dreams Come True (リメイク作品)

夢幻的で浮遊感のあるサウンドスケープがラスサビに向けてダイナミックに高揚していく、そうしたドラマチックな展開を印象付けるブリッジ・パートの末尾「내 맘을 알겠죠(ネ マムル アルゲッチョ=私の気持ちわかるでしょ)」の直後に続くアドリブは、オリジナル版・リメイク版共にボーカルの最高音部となっており、それぞれパダとウィンターの担当箇所です。

クリアな軽みもありつつ、非常に細かくジリジリと鳴るようなテクスチャーが、両者の声に共通していることがよくわかります。

パダの声は音の端に少し丸みがあり、ウィンターは鋭利な金属的な響きがより強いという差も見えてきますが、これは、S.E.Sとaespaのコンセプトの差異を示すものとも言えます。

S.E.Sはスクール・ルックやウェディング・ドレス・ルックを試みた清純派コンセプトであったのに対し、aespaは近未来的な仮想世界で強大な敵と戦うSF的な世界観を基調とするガールクラッシュ的なコンセプトです。

パダとウィンター、両メインボーカルの声の個性が、実にうまくグループのコンセプトと対応していることが理解できます。SMのプロダクションが、メインボーカルに重きを置いていることの分かりやすい事例です。

まとめ:SMエンターテイメントの歌唱の人気は衰えない

世界のスタンダードになりつつあるSM式ボイストレーニング

SMエンターテインメントは、韓国音楽界における革命的な企業として、その独自のアーティスト育成プログラムとボーカルトレーニングにより、K-POPアイドルの歌唱力を新たな高み引き上げました。

明確な発声と技巧的なボーカルパフォーマンスを特徴とするアイドルを数多く輩出し、韓国国内のみならずグローバル市場においても、同社の地位を確立してきました。

aespaのウィンターやS.E.Sのバダのような印象的なボーカルスキルを持った女性アーティストは、SMが育成した才能の豊かさを証明するのみならず、SMの音楽的遺産を次世代に受け継ぐ役割を果たしています。

SMエンターテインメントは今後もその伝統を守りながら、世界の音楽ファンを魅了する新たな才能を送り出していくことでしょう。

SMエンターテインメントのシンガーのように歌うには?

私たちTop1ine Artist DevelopmentのK-POPボーカルへの研究も20年以上の年月をかけています。

もしSMエンターテインメントのウィンターのように歌いたいという希望を持った方がいらっしゃいましたら、ぜひ私たちの独自に開発している『日本人のためのK-POP式ボイストレーニング』を体感してみてください。

K-POP式ぼいすとれーにんぐについては下記の記事で詳しく説明しているので、こちらも参考にしてくださいね。

【実例解説】K-POPアイドルの歌い方はJ-POPと何が違う?│『K-POPボイトレ』で初心者が知るべき4つの発声技術

執筆者情報
TOKIONE TETSUYA
AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、 独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。 NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。 2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。 早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

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