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【XGの歌唱力】│グローバルアイドルに必要なダンス練習や歌唱力トレーニング方法とは(後編)

2024 - 08.14
執筆者情報
TOKIONE TETSUYA

AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、
独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。
NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。
2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。
早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

このブログでは、グローバルアーティストを目指す方々に向けて、元ワールドオーディション優勝者である筆者の知見をもとに解説しています。

今回はXGのトレーニング方法の後半として、彼女たちがどのようなトレーニングを積んでデビューまで至ったのかを考察していきたいと思います。

第1章:XGと他の日本人アイドルグループの違い

1. これまでの日本人アイドルとは違うXGの歌唱法

平成後期から令和に続く日本のアイドルグループの歌い方の特徴はユニゾン歌唱と言って、グループ全体の調和や統一感を重視したものでした。

歌において個々のメンバーがソロで目立つよりも、グループとしての一体感を大切にしていました。ですので個々のボーカルスタイルが大きく異なることを目指さず、トレーニングの方向性もいわゆる基本的な歌唱技術を全員で共有するケースが多い印象でしたよね。

それに対しXGは、個々のメンバーが自分の声質やキャラクターに合った歌唱スタイルを高い次元で確立しています。メンバー全員がボーカルとラップの両方を担当できる実力を備えていますが、楽曲の中ではラップメインメンバーと歌唱メンバーは棲み分けがされており、それぞれが異なる音域や表現力で強みを発揮しています。

また、リズム感や英語発音のクオリティも非常に高いのが特徴で、K-POPのトップアーティスト陣に並ぶレベルの国際的な舞台でパフォーマンスを成功させています。

2.マルチリンガルだからできる歌い方

K-POPアイドルはテレビ番組などで洋楽のカバー曲に挑戦することが良くありますが、一方日本のアイドルパフォーマンスの中で、これまでの英語楽曲を歌うというのも少なかったように思います。

XGはオーディションからデビューまで約5年間トレーニングに費やしてきたとされていますが、英語のみならず韓国語も駆使しながらレコーディングに臨んでいる様子をYoutubeでも観ることができます。

Shooting Star レコーディング風景

第2章 各メンバーのボーカルスタイル&パートまとめ

1. JURIN (ジュリン)とCOCONA(ココナ)のラップスタイル

まず、ラップのトップパートを担当することが多いJURINとCOCONAの声質にある共通点について、焦点を当ててみましょう。

90年代HIPHOPからの影響がみられるJURIN

リーダーであるジュリンのは、XGの楽曲では中心的なラップボーカルを担当すています。力強い発声と独自のリズム感を持ち、特にラップパートでの卓越したスキルが際立ちます。ジュリンの声は低音域でもクリアで、エッジのきいたな表現を得意としています。

ジュリンのラップスタイルは、力強く、アグレッシブであり、彼女の声質とともにリリックに明確な存在感を与えています。

彼女のラップには、90年代のアメリカン・ヒップホップ、特にTLCなどの時代のフィメイル(女性)ラッパーの影響が見られます。

彼女のフローは、しっかりとしたアクセントをつけることでリズムと韻を踏むことを得意としており、リリックの中のメッセージ性を強調しています。彼女のラップは、強い意志や自己主張を内包し、トラック全体にエネルギーを与える役割を果たしていると言えます。

トラップ時代の現代HIPHOPを感じるCOCONA

一方、ココナのラップスタイルは、よりフレキシブルで、多彩なアプローチを取ることが特徴です。

彼女は、現代的なヒップホップの影響を強く受けており、フローの変化やリズムの遊びを楽しんでいる様子がうかがえます。

彼女のラップには、2010年以降急速に人気を博したトラップミュージックやクラウドラップの影響が感じられ、時折、メロディックな要素を取り入れることで、リスナーに印象的な音楽体験を提供します。

ココナのリリックは、より感情的であり、時には内省的なテーマを扱うことが多く、その結果、トラックに深みを与えています。

2, MAYA(マヤ)とHINATA(ヒナタ)のオールラウンド系ボーカル

マヤとヒナタの役割:XGの楽曲におけるパート分け

XGのマヤとヒナタは、バランスの取れたパフォーマンスでグループの楽曲において重要な役割を担っています。

主にVerse(バース)ボーカルパートやプレコーラス部分で力強い存在感を発揮し、感情豊かな表現力で曲の世界観を引き立てる役割を担っています。

2人ともラップ・歌唱ともに、柔らかなで優しいエネルギーを注ぎ込むことに長けている印象で、曲全体に勢いとリズムを与える役割を果たしています。特に、低~中音域で柔らかな厚みがあるマヤとヒナタの声は、楽曲の落ち着きを支え、リスナーに親しみやすいキャッチーな印象を与えてくれます。

マヤとヒナタは、それぞれの個性が光る部分を活かしつつも、グループ全体のバランスを保ち、XGの楽曲における多様性と深みを提供しています。

深みと感情を重視したマヤの歌唱スタイル

マヤの声質は、温かみがありつつもクリアで、リスナーに安心感を与えるトーンが特徴です。その歌唱スタイルは、感情表現を大切にし、歌詞の意味をしっかりと伝えることに重点を置いています。彼女のボーカルは、ミッドレンジの滑らかなトーンが特徴で、バラードやミッドテンポの楽曲で特にその魅力を発揮します。

また彼女のボーカルテクニックは、息遣いやビブラートの使い方など、繊細なニュアンスに富んでおり、曲に奥行きを与える力を持っています。全体として、マヤの歌唱スタイルは、XGの楽曲においてエモーショナルな要素を強化し、リスナーの心に訴えかける役割を担っています。

ヒナタのラップとボーカル

ヒナタの声質は、明るく優しい元々のトーンを大切にしたプロデュースがされています。ラップについてもフロウが軽快で、特にリズム感をトレーニングで鍛えたような軌跡の触感を感じます。

また、ヒナタのボーカルパートでは、元気でポジティブなエネルギーを放ち、楽曲に勢いを与える重要な部分を担当しています。全体として、ヒナタのパフォーマンスは、XGの楽曲において活気とダイナミズムを注入し、グループ全体のエンターテインメント性を高める役割を果たしています。

3,対照的なCHISAとJURIAの歌い方がXGの強み

CHISAとJURIAのどちらが歌が上手い?

よくCHISAとJURIAのどちらが歌が上手いかという疑問がウェブの掲示板などで見られますが、技術的な面、素質的な面の見方によって評価が分かれると思います。

クラシックでは男性シンガーがバリトンとテノールに分かれていますが、それは元々声帯の形や長さで得意とする音域帯が変わることを示します。バリトンにはバリトンの声の美しさとトレーニングでの作りこみがありまして、テノールにも同じことが言えます。

チサとジュリアは女性なので正確な定義がないのですが、チサがバリトン、ジュリアはテノール系統の声質なのは聴いて感じ取れます。

一見、体格もほぼ同じで2人とも素晴らしい高音を出せるので分かりづらいのですが、レコーディング風景などを見ると声質の違いが明らかです。

中低音域の太い響きがチサの強み

例えば下記のような強く響く地声低音領域はチサの声質が得意とするところです。

SHOOTING STAR /XGレコーディング時の様子

この強い胸声領域をベースに高音のレジスターチェンジを行っているのがチサの歌声の特徴です。

細いが高音まで統一された音色のジュリア

JURIAは幼少期からアイドルとして活動していただけあり、音程や聴音感覚は圧倒的に優れている印象があります。XGのオーディション段階で披露していた歌声を聴く限り、すでに完成された声質を持っています。

オーディション段階でのジュリアの歌唱

特徴としては力強さと繊細さのギャップを見せて表現をするチサに対し、ジュリアはパワーをあえて抑制した統一された音色でフレーズを作っているのが分かります。

4,Harver(ハーヴィー)の個性的なラップスキル

ハービーの声質は、XGのラップラインの中でもひと際目立つ独自の個性を持っています。彼女の声は音域的には低めですが非常にソリッドで硬い声質です。

この尖った低音域は、楽曲に重厚感を与えつつも、他のメンバーが高音で歌うパートとのバランスを見事に取っており、リスナーに強烈な印象を与えます。

また、彼女の声にはエッジがあり、感情をダイレクトに伝える力強さが感じられます。この特性により、XGの楽曲においてハービーのパートが来ると、楽曲全体に緊張感とエネルギーが増し、瞬時にリスナーの耳を捉えるのです。

ハーヴィーのラップスタイルとは

ハービーのラップスタイルは、力強くアグレッシブでありながら、細やかなニュアンスやリズムの遊び心を感じさせるものです。

彼女は声質の硬さがあるのでビートに対して非常にタイトに乗ることができますが、リズムを自在に操るスキルも持っています。

さらに、リリックの中で感情の強弱を巧みに表現し、聴き手を彼女の世界観に引き込む力があるのも特徴です。ハービーのラップには、彼女自身のエネルギーと自信が溢れており、それがリスナーにダイレクトに伝わります。彼女のスタイルは、XGの楽曲にエッジを加え、他のメンバーと共に楽曲の中で多彩な色合いを生み出す重要な要素となっています。

XGのような声をボイストレーニングで作れるのか?

R&B歌唱でデビューを掴んだ実例を紹介

私自身のプロデュース事例で恐縮ですが、歌手の清水美依紗を14歳からアーティストプロデュースする中で、終始こだわったのが、K-POPに負けないレベルでのR&B歌唱が出来る楽曲及びシンガーをデビューさせることでした。

上記に挙げた、ビブラート、エッジボイス、ベルティング、フェイク歌唱の魅力を日本語の楽曲にどう落とし込むかのところです。

やり過ぎると洋楽の真似をしていると思われたり、母国語の本来持つ音韻が失われてしまうことがあるのです。(※実はK-POPでも同じ課題があります)

下記のデビュー楽曲『STEP INTO MY HEART』の作曲段階、レコーディング段階でもフェイクを入れ込んでありますのでご参考になさってください。

作詞作曲 MV制作; Top1ine Artist Development 代表

レコーディング・歌い方ディレクション Top1ine Artist Development 代表↓

当時は17歳でしたが、この方の現在の歌唱法に比べR&Bの作法がより深い歌声にボーカルディレクションを施しました。

K-POPで活躍できるトップラインボーカルを育成しています

現在私たちTop1ine Artist Developmentでは、このような洋楽に近い本格R&B歌唱よりも、K-POPアイドル業界が求める歌い方を主に作り上げるボイストレーニングを研究しています。

このウェブサイトトップページのサンプル音源を聴いていただければかなり高い精度で、日本人でもK-POP歌唱を再現出来ていることを分かっていだけると思います。

現状、日本にある韓国大手事務所がオーディションする際によく言われるのですが、日本人で歌が上手いアイドル候補生の獲得に苦労しているためです。

ですので、そのような歌声でレコーディングディレクションしてほしい方や、プロとして活躍したいという方もぜひ下記より当スクールにお問い合わせいただければと思います。

執筆者情報
TOKIONE TETSUYA
AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、 独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。 NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。 2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。 早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

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