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【考察】aespaの音楽ジャンルとハイパーポップサウンドの源流│初日本語楽曲『HOT MESS』への海外ファンの反応

2024 - 07.15
執筆者情報
TOKIONE TETSUYA

AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、
独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。
NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。
2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。
早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

こちらのブログではK-POPやグローバルアーティストを目指すタレント様のために、世界の音楽市場についてプロデューサー目線で紹介しています。

今回は特に難解な世界観を持つaespaついて、音楽面から深く考察していこうと思います。

aespa初の日本語楽曲に対する海外の反応

aespa-Hot Mese(2024)

CD市場の日本では好意的な反応

K-POPを代表する大型グループ、aespaが2024年7月3日に日本語楽曲をリリースしました。『HOT MESS』がメインナンバーでしたが、他に『Sun and Moon』『Zoom Zoom』というナンバーも聴くことができます。

CDショップでは発売直後から高い売り上げを記録し、タワーレコード、HMV、楽天ブックスセブンネットショッピングなどでの購入特典としてトレーディングカードやメガジャケが封入され、好評を博していますね。

HMV渋谷店でも大きい展開

楽曲に対する反応はいかがでしょうか?

ミュージックステーションへの出演も果たす

日本国内のメディア露出としては、ミュージックステーションへの出演を皮切りに、フジテレビの特番やライブツアーも併せて、マス展開も行われました。
前回2024年4月28日のミュージックステーション初歌唱の際はメンバーのWinter(ウィンター)が欠席していたので満を持しての登場となりましたね。

EXIDのHOT PINKと同じガソリンスタンドが話題

特にK-POPのアートディレクションに詳しいファンからは、EXIDのHOT PINKに出てくるガソリンスタンドとほぼ同じセットがHOT MESSで使われていることが話題になっていました。

EXID-HOT PINK(2016)


第2章 aespaのハイパーポップの源流とは?

日本のメディアではまだaespaの音楽性について深く語られることが少ないですが、批評誌などではハイパーポップサウンドと言われることが多いですね。

ですが、一言で『ハイパーポップ』とくくられてもピンとこない人の方が多いのではないでしょうか?

実を言えば筆者の自分もこのハイパーポップを一言で表せと言われたら困ってしまいます。

ソフィーというEDMアーティストが潮流を作った

元々、ハイパーポップは世界の音楽業界史でメインストリームになることがなかったジャンルです。

むしろ、ビルボード全盛期のメインストリーム系R&Bや初期のEDMサウンドに馴染めない層による『アンチ主流』の思想が強かったと思います。

おそらくその頃はハイパーポップとも呼ばれておらず、例えばゲームやジャパニーズオタクカルチャーなどにも親和性の高い音楽ファンやもしくはトランスカルチャーなどのマイノリティ層の居場所を組むようなジャンルで、レトロゲームの音色やダークでギラギラした音色、コード進行の安心感を壊すような実験的なサウンドを作っていたイメージがあります。

そのような時代を経て、ソフィーというアーティストがビルボードのメインと融和し、新たな潮流を作りました。

SOPHIE-Faceshopping(2018)

スコットランド出身のSOPHIEというサウンドクリエイター、上記の楽曲は2018年に発表されたものでグリッチサウンドと呼ばれる機械音が多数使用されていて非常に変わったサウンドに聴こえると思います。

このグリッチサウンドはaespaの代表楽曲にもよく出てきますね。

ハイパーキネティックがHyper POPの語源

このSOPHIEの音楽性は当時『Hyper Kinetic』という修飾をつけて紹介されていました。この『Hyper Kinetic』のKineticとは動きの激しい様態を表す単語で、彼の既存の音楽用語では形容しがたい激しい音の動きをなんとか言葉で表した表現だったと考えられます。

現代のハイパーポップはどちらかというと近未来的POPのような意味合いが強く用いられていると思いますが、もともとはハイパーな動きのあるポップ楽曲を指しているものだったんですね。

海外のTwitterでも『Hyper Kinetic』と紹介

米アーティストChalie XCXがHyperPopを採用

そしてそのハイパーキネティックサウンドに目を付けたのがアメリカのポップアーティスト”Chalie XCX”でした。

Chalieといえばアメリカのティーンポップを代表とする楽曲で人気でしたが、アーティストとして常に新しい音楽を模索していて、目を付けたのが後にHyper Popと総称されていくSophieのサウンドだったのです。

Chalie XCX-Vroom Vroom(2020)

2020年のVroom Vroomを聴くと、MVの最初に出てくる字体のデザインも含め、aespaの音楽の原型が見て取れるような気がします。

ITZYが先にSOPHIEのハイパーポップとコラボ!

実はこのSOPHIEのハイパーポップ性を先に取り入れたのはITZYでした。2020年の3月に公開されたITZYの楽曲”24hrs”はSOPHIEが担当し、欧米のEDM圏でもニュースになっています。

楽曲としては、素晴らしいクオリティでSOPHIEのダークなグリッチサウンドが散りばめられたまさに『ハイパーキネティック・サウンド』がK-POP流で完成されています。

ITZY-24hrs (2020/Sophieプロデュース)

Sophieの不慮の事故

しかし、残念なことにハイパーポップの時代の風雲児となったSOPHIEは不慮の事故で亡くなってしまいます。その事件と直接的に関係があるわけではないと思いますが、このSOPHIE流のハイパーポップサウンドの潮流がK-POP、少なくともJYPサウンドに根付くことはなかったと言えます。

 


aespaのハイパーポップの音楽性

ITZYのハイパーポップ楽曲のすぐあと2020年の11月に『Black Mamba』でデビューしたaespaでしたが、爽やかなガールズポップ路線に軌道修正していったITZYとは対照的にダークでサイバーパンクな楽曲コンセプトを採用していました。

ではこのサウンドは音楽的にどのように作られているのでしょうか?

aespa-Black Mamba(2020)

ベース音はEDMのDUBSTEPから

SOPHIEのハイパーキネティックサウンドもそうでしたが、なんといってもハイパーポップの特徴というのはベースの音色や動きが特徴となります。

言葉でお伝えするのは難しいので、これは動画で聞いていただいた方がいいと思いますが、下記の動画で実演しているような音色をDUBSTEPベースと言います。

DUBSTEPベースの実演

この太くギラギラしたベース音を主軸にしながら、なるべくピアノのコードやギターのバッキング音でハーモニー感に聴覚が持っていかれないような編曲になっているのがわかると思います。

こういう手法を見ますとJ-POPのメインストリーム系やボカロの音楽性とは全く違う感性で構築されているのがわかります。


aespa日本語楽曲での音楽性の変化

上のYoutubeでのサウンド解説はaespaの日本語楽曲『HOT MESS』の歌メロを使いつつ、編曲は初期のエスパサウンドの音の鳴りを再現できるよう意識して行っています。

では今回の『HOT MESS』の音楽性は日本デビューにあたり何か変化はあるのでしょうか?

DUBSTEPベースから808サウンドへ

今回の『HOT MESS』を聴いてみると、一般の音楽リスナーはハイパーポップサウンドという言葉までは知らなくとも、aespaらしい近未来的なダンストラックである印象を持つとは思います。

ですが、aespaの楽曲を聴き続けているファンの方々は前作Supernovaまでのエスパサウンドと比べて違う音色が鳴っているのに気付いた方も多いのではないでしょうか?

上記で取り上げたキネティック(動きの多い)なハイパーサウンド、言い換えればEDMのDUBSTEPベースが聴こえてきませんね。

特にラップパートの部分では比較的カチッとリズムを均等に刻むドラム音色が主軸に置かれているのがわかると思います。

こちらは現在世界的に流行しているTRAP系ヒップホップの808トラックの音色を意識しているように感じました。

808音色をBabymonsterの楽曲で解説

 


aespaの音楽性をさらに理解するために

いかがでしたでしょうか?今回はaespaの音楽性の成り立ち部分、基礎となるハイパーキネティックPOP、通称Hyper Popに焦点を当ててみました。

もちろん今回取り上げたEDMアーティストやポピュラーアーティストの他にもハイパーポップの源流を呼称されているミュージシャンは沢山いるので、ぜひご興味を持っていただけましたらご自身で掘り下げていただければ幸いです。

常にどん欲に新たな音楽性を求めるK-POPプロデューサー達の存在にも注目してみると楽しいはずです。

SMエンターテインメントの歌の歴史も知ると面白い

また、aespaやSMエンターテインメントの音楽を語るうえで欠かせないのが歌へのこだわりになります。EDMサウンドの強い音圧に負けない煌びやかな響きのボーカルはaespaの強みでもあり、SMエンターテインメントの歌手たちならではの技術でもあります。

そのテーマについてはこちらの記事で詳しく紹介しておりますので、併せてお読みいただければ嬉しいです。

K-POPアイドルの歌唱力①│aespa”ウィンター”を育成したSMエンターテインメント式ボーカルトレーニング

では最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

 

執筆者情報
TOKIONE TETSUYA
AVEXワールドオーディション台湾での優勝を機に作曲家として活動し、 独立後はシティポップ・アーティストとしてJAPAN TIMES誌にも掲載された。 NTTドコモ音楽事業部にて、デジタル音楽及び全国オーディションプラットフォームのサービス主幹を担当。 2014年から発掘・アーティストプロデュースを担当した清水美依紗がメジャーデビューを果たした。 早稲田大学・政治経済学部政治学科卒。

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